金沢工業大学生にとって
プロジェクトとは
何なのか?
金沢工業大学(KIT)には必修科目でもある「プロジェクトデザイン」に加え、さらなるプロジェクトがある。ものづくりを中心にした「夢考房プロジェクト」と専門科目の延長上にある「学科プロジェクト」がそれだ。どちらも1年次から参加できる課外授業なのだが、それにかける学生たちの熱量はハンパではない。
KITのお家芸を発揮して
「NHK 学生ロボコン」
大会での優勝を目指せ!
Team_Robocon は、2022 年に「NHK 学生ロボコン」で準優勝を果たした。だがメンバーはみな「悔しい」と振り返る。なにせ過去に優勝3 回(1 回は国際大会でも優勝)、準優勝4 回を誇り、ロボコンの世界でもKIT と言えば知られた存在だ。プロジェクトリーダーの稲垣拓さんは「高校時代に見たかっこいいロボットの姿が忘れられず、自分もロボコンに参加したいからKIT を選んだ」と話す。ちなみに稲垣さんの言うかっこいいは「独創性がある」ことだという。
毎年10 月、競技ルールが発表されると、まずは全員でどんなロボットで戦うかを検討する。その方針に沿って翌年6 月の大会まで3 班に分かれ、設計とプログラミング、組み立てを行っていく。毎年ルールが違うため、まさにアイデア+技術力=独創性の勝負というわけだ。
「大会前日、参加ロボットが勢ぞろいして初めてその全容がわかる。楽しい瞬間です。そこから対戦相手の動きを予測し、戦略をかえたりもします」と話すのはTeam_Robocon のリーダー?萩原嵩大さん。大会前、学園祭やSNS で発信するときは、わざとあいまいな情報を流すことも。新たな機構や戦術を敵方に悟らせないためだ。しかし、大会が終わればノーサイド。優れた技術を持つチーム同士、お互いに教えを請い、情報交換をし、次なる健闘を誓い合う。
さて、大会に出たロボットは翌年のパーツ取りのため解体されることになっている。「寂しいので一部をもらって部屋に置いています」「なかなか解体できないというのはありますね」と二人は口々に言う。このロボット愛をわかる君、ぜひロボコンに参加してほしい。
優勝を飾ったロボットは
いまでも夢考房一階に
展示されている伝説のマシン
機構班
戦略や方針を全体で合意すると、具体的な動作の検討に入るのが機構班。設計し、金属加工でパーツを切り出し、組み立てる。足回りやものをつかんだり、投げたりするアームなどを試作し、“勝てる動き”を模索。動作が実現可能か、制御班?回路班との連携も必至だ。
制御班
機体のアイデアが固まってくると、制御可能か検討しつつプログラムを書く。制御にはものを識別するセンサーやそのデータ通信も含まれ、さらに新たに動かすための制御法の学習も必須。大会ではロボ全体をよく知る制御班がロボットの操縦を担当することが多い。
回路班
ロボットに動力を与えたり、パーツからのデータを基板に集め、それを制御のプログラムと連携させるなど、機構と制御の間をつなぐ役割。マイコンや基板の設計や、マイコンからの指令を基板に送って実行するプログラムの知識も要求される縁の下の力持ち的存在だ。
限界の、さらに先へ。
燃費2000km/?を狙う
究極のエコカー
1リットルのガソリンでどれだけの距離を走れるかを競う「エンジンエコラン」と、わずか3 円分の電気で走行距離を競う「EV エコラン」。エンジンとモータの違いはあれど、夢考房エコランプロジェクトでは、その両方のレースに挑戦を続けている。幼いころからガソリン車に興味を抱き、大会でドライバーを務めた小林大護さん。1、2年次はコロナ禍で大会が中止。3 年次にかけるチームの思いは強かった。
「大会1 週間前に突然エンジンがかからなくなってしまって。一つひとつ検証し、電装系に問題があることを突き止めてなんとか修理できました。直前に大きなトラブルがあったので、みんなで今大会の目標は『完走する』ことに切り替えました」と振り返る。
ただ、過去に燃費2000km を超える記録を出して優勝したこともあり、まだ挑みがいがある。「車体からエンジンの内部パーツや吸排気管、電装基板に至るまで極力自作にこだわっているので、多くの経験を積める」と力を込める。燃費?電費を向上させるための知識だけでなく、制御に関する深い知識も必要不可欠となるため、自動車に興味のある人にはうってつけだ。
VR空間内に
新感覚を生み出す
能力のインターネット
IoA プロジェクトは、建築、情報工学、威廉希尔中文网站情報の3 学科の強みを集めた学科横断型の学科プロジェクト(上記3 学科以外からも参加可)として発足。
IoA とは、通信技術とVR などを組み合わせて人間の能力や感覚を拡張させるもので、「能力のインターネット」とも言われる。同プロジェクトが工大祭でお披露目したのは、自作のVR ゲーム。ヘッドセットを被ってプレイすれば、全方位を自在に移動できる空間内で空を飛んだり、巨大な敵を倒したり、誰もが自分の能力や感覚が拡張される感じを受けるだろう。
面白いのは、各学科が得意とする技術を持ち寄り、一つの世界観をつくり上げるところ。学科では、さまざまなソフトウェアの使い方を授業で学ぶが、それを駆使して新たな世界を仮想空間内に実現させるのだ。建築学科の学生が建物や空間を設計し、威廉希尔中文网站情報学科の学生がアバターやキャラクターをつくり、情報工学科の学生がプログラムしてゲームに仕上げる。
「いま取り組んでいるのはVR オフィスです」とリーダーの熊谷千聖さん(情報工学科)。これはヘッドセットがなくてもVRChat のようなソーシャルアプリ上で動かすことを目指しているという。「VR オフィスというと堅いけど、そこにビーズクッションみたいなオブジェクトがあったら座ってみたくなりますよね? そういう感覚的な心地よさを感じられる場づくりが目標です」と展望を語ってくれた。
専門的なソフトを駆使して、
みんなで一つの作品を
つくっていきます
モデリング部
建築担当
思い描く建物を立体的に表現できる3DCAD ソフトのなかでも、「Archicad」を使用。感覚的につくることが可能で、「マテリアルの雰囲気が合わない」と思えば、画面上ですぐに別の材質のものに変更するなど、リアルタイムで確認できる。ゲームでは、空間設計や建物の外観、インテリア、街の樹木なども担当する。
モデリング部
オブジェクト担当
3DCG モデリングの無料ソフト「Blender」を使うのは、威廉希尔中文网站情報学科の学生たち。主にキャラクターを3D データとして制作しているが、下絵を描いてキャラをイチからつくることもあれば、ネットにアップされているフリー素材を改造してつくることも可能。「3DCG の入門には最適だと思いますよ」と話す。
開発部
情報工学科の学生が、モデリング部がつくった建物やオブジェクトを統合し、動かすためのプログラムを担当。市販のゲーム製作にも使われる統合型3DCGソフト「Unity」をメインに利用する。「ビームや炎のようなゲームの魅力を高めるパーティクルを入れたりするのも体験の質を上げていくには大事な要素です」。