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虎ノ門大学院ブログ
2023年02月03日

『企業価値向上に資する知的財産活用事例集』刊行記念セミナーを開催。特許庁、メルカリ、味の素から3名のゲスト講師をお招きしました。

デジタルトランスフォーメーション(DX)や、持続可能な社会の実現に向けて、知財?無形資産を活用した経営の実践が求められています。欧米では企業価値の源泉が有形資産から知的財産を含む無形資産に移ってきており、米国S&P500の市場価値において無形資産の占める割合が 9 割に至っている等の試算もあります。


■ 産業界、官公庁、大学の連携イベント

こうした中、日本企業による知的財産を活用した経営の取り組みを後押しすべく、特許庁により『企業価値向上に資する知的財産活用事例集』が2022年5月に刊行されました。経営層と知財部門とのコミュニケーションに着目して企業20社を対象にヒアリング調査を実施。最新の取り組みが紹介されています。

KIT虎ノ門大学院では、本事例集の刊行を記念して「知財経営を推進している企業の特徴」や「経営層と知財部門とのコミュニケーション」をテーマに、KITプロフェッショナルミーティングを1月18日(水)に開催しました。今回の虎ノ門大学院ブログでは、その様子をレポートします。

ゲスト講師は3名。本事例集を取りまとめた特許庁企画調査課の植田高盛氏、事例集にも掲載された(株)メルカリのIPマネージャの上野英和氏、味の素(株)の知的財産部長の勝沼依久氏です。産業界、官公庁、大学の連携のイベントということもあり、事前の反響は予想以上に大きく、当日はオンライン形式で約90名もの方々にご参加いただきました。


■ 知財活用事例集の概要と特許庁の取り組み

知財を活用した企業価値の向上を推進するためには何が必要か。事例集では、経営層が経営における知財の役割や貢献を理解し、また、知財部門が経営層の思い描く将来像を理解し、経営層に知財に関する情報提供ができるような「相互のコミュニケーションの活性化」が鍵であると問題提起しています。



まずは今回の事例集を作成した背景やその概要について、特許庁企画調査課の植田高盛氏からお話しいただきました。その後、企業内風土の変革を実現し、社内での知財についてのコミュニケーションを活性化したケースについて、どのようなステップで取り組みを進めたのか、実例に基づいてご紹介いただきました。特許庁では、過去に作成した事例集も特許庁ホームページで情報提供しています。その他、広報誌「とっきょ」を発行したり、YouTubeチャンネル「JPO Channel」で情報発信をしていますので、こちらもぜひチェックしてみてください。


■ メルカリの知財戦略とは?

続いてお話いただいたのは、オンライン市場での進歩的な取り組みが注目を集める(株)メルカリのIPマネージャの上野英和氏。知財部門が「知財はどのように会社に貢献できるか」というシンプルで重要な問いに向き合うことで、事業部や経営層との協力関係も構築されているというお話でした。同社のサービスでは累計出品数が30億品を超えて、さらなる成長が見込まれている一方、課題もあります。



例えば、手口が巧妙化し、いたちごっこが続く模倣品対策においては、知財チームが監視プログラムや削除基準などを作成しているそうです。他には、オープンソースソフトウェアの利用におけるコンプライアンスリスクに適切に対応することが、オープンソースのコミュニティからの評価を高め、優秀な人材の採用にもつながっているとのことです。


■ 現場とのつながりを重視する味の素

続いてお話いただいたのは、食と健康の課題解決を通して新たな価値を生み出す味の素(株)の知的財産部長の勝沼依久氏。事業の競争力強化に向けて、知財部門がどのようにR&D部門や事業部門と連携してきたか、また、そのために知財部員にどのような意識の変革があったのかを国内外の実例に基づきお話しいただきました。



特に印象的だったのが、知財部門の受け身な体質の転換に取り組まれてきたというお話。「戦略は事業部の仕事が考えるもの」という従来の考えを手放し、「高度な知財課題を伴う戦略は知財部と対話しながら一緒に考えたい」というニーズに応えたり、「専門的回答を出すだけ」ではなく「アクションの提案まで行う」ことに取り組むことで、現場との協働関係を築いてこられたそうです。


■ 登壇者全員でパネルディスカッション

最後には、本事例集の調査研究に携わり有識者委員会の委員長を務めた加藤浩一郎教授の司会進行のもと、パネルディスカッションを実施しました。実は、事前の打ち合わせはほとんど無かったのですが、登壇いただいたゲスト講師の講演テーマの関連性が高く、闊達な意見が飛び交い、議論も大変盛り上がりました。



「人材育成」「経営層の意識付け」などのテーマについて、参加者の皆様からも積極的な質問を頂きながら、各社の取り組み実例や生々しい悩みなどを共有いただき、予定時刻を少しオーバーしながら盛会のうちに終了しました。


■ 参加者の皆様からのコメント

参加者の皆さまからのアンケート評価も高く、多くのコメントが寄せられましたので、簡単にご紹介します。

「人材育成や社内コミュニケーションについて、各社悩みながら工夫していることがわかり、興味深かったです。ありがとうございました」

「知財のこういった活動提案は非常に面白いと思います。もっと続けねばいけない活動だと今回のセミナーと通して実感できました。今後もプロジェクト含め知財の連携体制整えて、経営に資する知財を形作っていくことに貢献しようと思います」

「知財部単独ではなく、事業部と共に取り組む点が、改めて参考になりました。貴重なお話ありがとうございました。機会ありましたら今回掲載の他社様のお話も伺いたいです」

「資料もご提供頂き、ありがとうございました。またこのような機会があれば参加させてください」

「質問にご回答いただき、ありがとうございます。加藤先生がおっしゃる通り、係争はある業界ではありますが、弊社は係争がなく過ごせています。そこには権利を取得していることなどの知財部の貢献があると思っていますが、痛い目をみていない開発などの他部門は平和ボケしているように思われます。ご助言いただきました方向で話をしたいと思います」

「ありがとうございました。異なる業種の知財交流は初めてだったので刺激になりました。興味あるご講話をありがとうございました」


■ 知財教育のパイオニア、KIT虎ノ門大学院は設立20年目へ

KIT虎ノ門大学院では、今後もビジネスパーソンの方々のご期待に応えるべく、様々なイベントを開催して参ります。そして、知的財産や無形資産への投資、自社ビジネスでの活用方法をより深く学びたいという方は、ぜひ本学への進学をご検討ください。



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