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ディスプレイ用薄膜材料の開発や太陽電池の高効率化における長年の実績が評価。南内嗣教授が応用物理学会フェローに選出されました
南内嗣教授が応用物理学会からフェローの称号を授与されました。南教授は、電気電子工学科に所属し、長年に亘って、機能性酸化物半導体薄膜材料の開発及び光電相互変換デバイスへの応用に取り組んできました。今回の授与は、この学術?研究業績が評価されたものとなります。
応用物理学会には、継続的な活動を通じて、学術?研究における先駆的な業績、産業技術の開発?育成における重要な業績、教育?公益活動を通した人材育成や教育における業績などにより、応用物理学の発展に顕著な貢献をした研究者を表彰する『応用物理学会フェロー表彰制度』があり、選出された研究者にはフェローの称号が授与されます。
9月18日(水)~21日(土)に開催される応用物理学会秋季学術講演会で、フェローの表彰式が行われる予定です。
南内嗣教授の主な業績
1. 金属酸化物半導体透明導電膜の開発
透明導電膜は、透明で電気を通すという性質を持ち、液晶テレビのようなディスプレイや薄膜太陽電池において必要不可欠な透明電極に用いられています。南教授はZnO系を始めとしてn形半導体からなる多くの新規な多元金属酸化物透明導電膜材料及びその成膜技術を開発し、用途に適合する諸特性(性質)の実現手法を確立しました。世界に先駆けて開発したZnO系透明導電膜は、薄膜太陽電池用透明電極として実用化されています。また、世界で初めて p形透明導電膜を作製し、透明酸化物pn接合ダイオードを実現しました。2000年代に入り、ディスプレイ産業の規模が巨大化する中で、透明導電膜の主原料である希少金属の供給不安が大きな社会問題となりました。南教授はZnO系透明導電膜を用いる代替材料技術の開発に取り組み問題点を解決しました。
2. 酸化物蛍光体及び薄膜エレクトロルミネッセンスディスプレイの開発
南教授は蛍光体薄膜及び無機薄膜エレクトロルミネッセンス(TFEL)ディスプレイの開発を手がけ、独自のデバイス構造を有するセラミックス絶縁型TFELを提案し、低電圧駆動?高輝度発光を実現しています。世界で初めて酸化物蛍光体薄膜を発光層として採用するZn2SiO4:MnTFELを作製し、実用レベルの高輝度緑色発光を実現しました。また、Ga2O3系蛍光体や多元系酸化物蛍光体薄膜を開発し、多色高輝度TFELを実現しました。
3. 高効率亜酸化銅太陽電池の開発
古くから亜酸化銅(Cu2O)を太陽電池に応用する研究が注目され、1970年代後半から大々的な開発プロジェクトが米国で実施されたにも拘らず光電変換効率が安定的に1%を超える太陽電池は実現できませんでした。南教授は、高品質多結晶Cu2Oシートの作成技術、低ダメージヘテロ接合の形成技術及び最適なn形半導体層の開発に成功し、2017年にn形ZnO系透明電極/n形Zn-Ge-O薄膜/p形Cu2Oシートヘテロ接合太陽電池を開発し、8.23%の変換効率を実現しました。
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