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麹菌などの有益な種とカビ毒を生産する有害な種の両方が含まれるAspergillus属 Flavi節の多様性を比較ゲノム解析で解明。大学院バイオ?化学専攻の町田雅之教授が執筆者として参画した論文が『Nature Communications』27 February 2020に掲載
金沢工業大学大学院工学研究科バイオ?化学専攻の町田雅之教授が執筆者として参画した論文「A comparative genomics study of 23 Aspergillus species from section Flavi」が『Nature Communications』27 February 2020に掲載されました。
『Nature Communications』は生物科学、化学、物理科学、地球科学のあらゆる領域を対象範囲に高品質な重要論文をオープンアクセスで掲載するオンライン限定の学際的ジャーナル。インパクトファクターが高いジャーナルの一つとして知られています。
Aspergillus属 Flavi節には、酒?味噌?醤油などに利用され高い安全性で知られるAspergillus oryzae(麹菌)が含まれる一方で、ピーナツやトウモロコシなどの穀物汚染を引起こすAspergillus flavusなどのカビが含まれていて、経済的に大きな影響を及ぼしています。この論文では、新たに19種のゲノム解析を行い、Flavi節に属する23種のゲノム塩基配列の比較を行い、さらに糖質分解や二次代謝物に関する解析を行うことで、種間の高い多様性を明らかにしました。また、従来はA. oryzaeに最も近縁な種はA. flavusであるとされてきましたが、再評価によってA. minisclerotigenesかA. aflatoxiformansであることが明らかになりました。
A comparative genomics study of 23 Aspergillus species from section Flavi
Nature Communications volume 11, Article number: 1106 (2020)よりSupplementary Figure6.
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論文abstract(日本語訳)
Aspergillus属のFlavi節には、有益な種と有害な種の両方が含まれる。例えばA. oryzae(麹菌)は醸造や酵素生産に使われるが、A. flavusは穀類への汚染を引起こしカビ毒を生産する。本論文では、Flavi節に属する19種のゲノム解析を行い、Flavi節の23種を含む全31糸状菌種について、ゲノム塩基配列を比較した。これらを用いて系統関係の再評価を行い、A. oryzaeに対して最も近縁な種はA. flavusではなくA. minisclerotigenesかA. aflatoxiformansであること、ゲノム全体とその中でもテロメア近傍の塩基配列の高い多様性を明らかにした。またFlavi節のゲノム塩基配列より、豊富なCAZyme(糖質関連酵素)(598個/種)、および多数の二次代謝物生合成遺伝子クラスター(73個/種)を予測した。しかし、実際に観察される表現型(生育特性、多糖の分解)は、構成するCAZymeからの推測とは必ずしも一致しなかった。今回のゲノム解析、表現型解析、および二次代謝物の同定は、Flavi節の遺伝的?代謝的な多様性を際立たせた。
A comparative genomics study of 23 Aspergillus species from section Flavi
Nature Communications volume 11, Article number: 1106 (2020)
https://www.nature.com/articles/s41467-019-14051-y
【関連ページ】
金沢工業大学研究者情報 大学院工学研究科 バイオ?化学専攻 町田 雅之教授
https://kitap01.kanazawa-it.ac.jp/researcherdb/researcher/RBIAAI.html