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大学院の稲塚遥香さん、佐々木教授、JAXA宇宙科学研究所の合同チームが「進化計算コンペティション2021」の多目的部門で2位に。経済ショック時の給付金支給のシミュレーション結果を競う
大学院の稲塚遥香さん(工学研究科機械工学専攻博士前期課程1年)、佐々木大輔教授が、宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究所の学生4名?大山聖准教授との合同チームで「進化計算コンペティション2021」に参加し、多目的部門で2位となりました。
「進化計算コンペティション」は、進化計算(※)の実応用と産学交流を促進するために、進化計算学会が2017年から開催している最適化コンペティションです。2021年大会のテーマは「社会シミュレーションによる経済支援施策の設計」でした。近年、コロナ禍による経済ショックが問題視されています。そこで、2021年の進化計算コンペティションでは、経済ショックに対する経済支援策の影響をシミュレーションし、よりよい施策を見つけることを競うルールで大会が実施されました。多目的部門では2つの都市を想定して、経済ショックが起きたときに、住人のうち誰を支給対象としいくらの額の給付金を与えるかなどを考え、シミュレーションで結果を導き出します。困窮状態の解消度合い、経済ショック前と給付後の収入の差で、結果を評価します。2021年10月26日から競技がスタートし、12月25日~26日にオンライン開催された進化計算学会「進化計算シンポジウム2021」で結果が発表されました。
稲塚さんは、金沢工業大学大学院で学ぶと同時に、JAXA宇宙科学研究所の技術実習生を務めています。JAXAは、2024年度にイプシロンSロケットで深宇宙探査技術実証機「DESTINY+」の打ち上げを予定しており、稲塚さんはJAXAとの共同研究として、この探査機の軌道設計最適化の研究(目標天体到達時間の最小化,最大日陰時間の最小化など)を行っています。
共同研究の縁があり、稲塚さんは、JAXA宇宙科学研究所の学生との合同チームで、今回の「進化計算コンペティション2021」に参加しました。宇宙科学研究所の学生の一人が研究しているアルゴリズムをベースに、そこに工夫を加えて、コンペティションの問題の最適化に取り組みました。今回のコンペティションの出題が、例年のような工学的な問題ではなく、社会的な問題だったため苦労はありましたが、合同チームで週1回のオンラインミーティングを重ね、参考文献集めや、社会的な問題のノイズを除去するなどの検討を行ってきました。コンペ1位のチームとの結果は僅差で、惜しくも優勝は逃しましたが2位の成績を残すことができました。
稲塚さんが「進化計算」を勉強しはじめたのは、3年次に佐々木研究室に所属になってからで、現在の研究でも使用しています。今回は、データサイエンス系のコンペの参加としては初めての経験でしたが、「コンペの問題解決のために最適なアルゴリズムを検討するのに苦労しましたが、知識を深めるよい経験になりました」と話しました。
※進化計算:生物の進化のメカニズムを参考に、問題の最適化を図るための効率的な計算手法のこと。
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進化計算コンペティション2021