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応用化学科の岡田豪准教授が応用物理学会 新領域グループ「極限的励起状態の形成と量子エネルギー変換研究グループ」の2021年度「論文賞」を受賞
応用化学科 岡田豪准教授が、応用物理学会 新領域グループ「極限的励起状態の形成と量子エネルギー変換研究グループ」における2021年度「論文賞」を受賞しました。3月25日(金)に青山学院大学相模原キャンパスで行われた応用物理学会春季学術講演会において受賞記念講演を行いました。
今回受賞対象となった論文は、Materials Today Communications誌に掲載された「Undoped CaSO4 showing highly enhanced radio-photoluminescence properties」です。この研究では、(1)無添加のCaSO4においてラジオフォトルミネッセンス(RPL)特性が認められ、(2)現在個人被ばく線量計用に実用化されているRPL素子である銀添加リン酸塩ガラスと比較して感度が10倍程度高く、(3)放射線照射直後からの応答値の安定性が優れていることなどの優れた特性が認められ、速報的に論文にて報告を行いました。従来の熱ルミネッセンス(TL)および輝尽蛍光(OSL)と比較し、RPLは繰り返し記録情報を読み出すことが可能であり、読出し時の統計誤差を最小限に抑えられる利点を持ちます。また、CaSO4は古くからTL型被ばく線量計の蛍光体素子(母体)として利用されていた経緯があり、製造や取り扱いの観点で実績がある点からも、今回の材料は実用化への展開が期待されています。さらに、今回報告した材料は原料粉末を空気中で高温処理するのみで得られ、従来のRPL材料と比較しても格段に作製方法が容易である特徴を持ちます。一方、今回報告した材料は合成条件などの最適化が行われておらず、今後の研究によりさらなる特性の向上が期待されます。さらに、放射線照射直後からの応答値に高い安定性を有することから、従来材料(特にAg添加リン酸塩ガラス)では困難であったリアルタイム線量計測などの新たな応用展開が期待されます。
これら既に得られた新規性の高い知見は国際特許(PCT/JP2019/42146)として出願済であり、現在、今後のさらなる実用化への展開に向けた研究を株式会社千代田テクノルと共同で進めています。
受賞対象論文:
Go Okada, Yasuhiro Koguchi, Takayuki Yanagida and Hidehito Nanto “Undoped CaSO4 showing highly enhanced radio-photoluminescence properties” Mater. Today Commun. 24, 101013 (2020)