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【能登半島地震ボランティアJAN2活動報告】
教職課程履修学生が中心となり、のべ150名に及ぶ学生が、集団避難の中学生への支援物資運搬や清掃、能登学習支援を実施
2024年1月1日に発生した令和6年能登半島地震後、「自分たちにできることはないか」という想いから、金沢工業大学で教職課程を履修する学生を中心に、のべ150名に及ぶ学生たちによる復興支援ボランティアが立ち上がりました。
当ボランティア活動は、前期試験前後の7月を除き、2月以降、毎月継続して行われました。
本レポートでは、学生たちにより行われた「中学生の集団避難先への支援物資運搬と清掃ボランティア」と「能登学習支援ボランティア」についてご紹介します。
【中学生の集団避難先への支援物資運搬と清掃ボランティア】
2024年2月2日、応用バイオ学科4年の蓬澤 陸さんが中心となり、ボランティア活動に興味のある学生をGoogleフォームで募ったところ、100名を超える学生がボランティア名簿に登録しました。しかし当初は、道路などのインフラが復旧していなく、自治体の受け入れ態勢も整っていなかったため、石川県からは、現地でのボランティア活動を控えるよう呼びかけがされていました。
学生たちは教職課程の白木みどり教授に相談したところ、「ボランティアはニーズに応えることが重要」とアドバイスされました。
折しも、珠洲市、輪島市の中学生が、白山ろく少年自然の家と医王山スポーツセンターに集団避難を行うことを知った学生たちは、「自分たちでできることはないか」、白木教授に再度相談。白木教授は、白山ろく少年自然の家に要望を聞いたところ、全国からの支援物資の多くは、菓子類、文房具類で占められ、鮮食料品が不足していることがわかりました。
白木教授はJAののいち常任監事の中塚誠氏に相談し、JA石川県中央会の吉田諭氏にご協力いただけることとなり、学生たちによる長期にわたるボランティア活動がスタートしました。
2月3日(土)
●JAから届いたみかん30箱を白山ろく少年自然の家に運搬
2月9日(金)
●石川県農業会館に用意していただいたパイナップルジュース約250箱、シークワーサーゼリー約24箱、パイナップルゼリー約24箱を金沢工業大学まで運搬。1号館108室に保管された。
●同日、医王山スポーツセンターにパイナップルジュース20箱、シークワーサーゼリー4箱、パイナップルゼリー4箱が学生たちにより運搬された。
2月14日(水)
●白山ろく少年自然の家で清掃
●JAに用意していただいた支援物資を白山ろく少年自然の家と以下に運搬
?白山ろく少年自然の家
パイナップルジュース8箱、パイナップルゼリー5箱、シークワーサーゼリー5箱
?鶴来中学校
パイナップルジュース3箱、パイナップルゼリー2箱、シークワーサーゼリー2箱
?白嶺中学校
パイナップルジュース3箱、パイナップルゼリー1箱、シークワーサーゼリー1箱
?鳥越中学校
パイナップルジュース3箱、パイナップルゼリー1箱、シークワーサーゼリー1箱
2月15日(木)
●石川県農業会館に用意していただいたパイナップルジュース、シークワーサーゼリー、パイナップルゼリーのうちパイナップルジュース95箱を野々市市役所に運搬
2月16日(金)
●白山ろく少年自然の家で風呂掃除
2月21日(水)
●白山ろく少年自然の家で風呂掃除と消毒作業
2月23日(金)
●白山ろく少年自然の家で風呂掃除
2月28日(水)
●金沢市で避難生活をしている方への支援物資の無料配布場所となっている金沢福祉用具情報プラザ (ルキーナ金沢) に元金沢市議会議員の山本由紀子氏を介してパイナップルゼリー3箱、シークワーサーゼリー3箱、パイナップルジュース60箱を運搬
●白山ろく少年自然の家で風呂掃除
3月1日(金)
●白山ろく少年自然の家への物資運搬と美化清掃
運搬物資は全国農業協同組合連合会石川県本部より頂いたJAおきなわの「パインアップル」500mL 1箱(24本)、パインアップル蒟蒻ゼリー2箱(48個)、シークワーサー蒟蒻ゼリー2箱(48個)を運搬
3月6日(水)
●白山ろく少年自然の家での美化清掃?除菌作業
3月8日(金)
●白山ろく少年自然の家での風呂掃除と床掃除
3月13日(水)
●白山ろく少年自然の家での清掃と支援物資運搬
支援物資としてJAおきなわからお預かりした蒟蒻ゼリー(パインアップル味、シークワーサー味)5箱を運搬
3月20日(水)
●集団避難していた中学生が3月22日に輪島に戻るため、この日の白山ろく少年自然の家での清掃が最後の清掃作業となった。
4月27日(土)
●JAから支援していただいたレトルトカレー85箱をルキーナ金沢にある金沢福祉用具情報プラザに運搬。能登から避難してきた方々に配布された。
5月16日(火)
●JAから支援していただいた大人用おむつ約60箱(S-Mサイズ20箱、M-Lサイズ20箱、L-Mサイズ20箱計6000枚)とお茶20箱を金沢工業大学教職支援室に運搬し保管。金沢市地域包括支援センターやましなを介して、被災し金沢の施設に入所している高齢者に提供した。
6月15日(土)
●JAから支援していただいた梨ジュース20箱をルキーナ金沢にある金沢福祉用具情報プラザに運搬。能登から避難してきた方々に配布された。
【その他】
支援物資の一部は輪島市からアパホテル片町中央に避難されている方々、珠洲市から川北町営住宅に避難されている方々、能登町内浦から避難されている方々に配布した。
【能登学習支援ボランティア】
珠洲市の吉木充弘教育長から金沢工業大学教職課程の白木教授に教育ボランティアの要請があり、学生12人が珠洲市内の4校に分かれ、8月7日(水)から9日(金)までの2泊3日の日程で学習支援や交流を行いました。
●珠洲市立緑丘中学校
生徒は夏休みの宿題の問題集を持参。分からない点を質問する形で進められました。
レクリエーションには、「紙飛行機コンテスト」 「新聞紙タワー」を実施。
「紙飛行機コンテスト」は、紙飛行機を折り、その飛距離を競いました。
「新聞紙タワー」では、チーム対抗で、新聞紙のみを使って、いかに高い造形物を作るか競いました。生徒たちは白熱し、笑顔がみられました。
●珠洲市立三崎中学校
夏休みの宿題のサポートを行いながら、夏休み明けの運動会に向けた練習やレクリエーションを行いました。夏休みの宿題として各教科におけるワークでわからなかった部分を教えることや、読書感想文の書き方、自由研究の研究方法を一緒に考えアドバイス等を伝えました。中でも 2 年生の課題である、「石川県統計グラフコンクール」で統計処理を行う課題では、金沢工業大学の学生として、生徒たちの力になれたと感じたそうです。
レクリエーションでは「紙飛行機コンテスト」、「新聞紙タワー」を実施。「紙飛行機コンテスト」では、Zoomで緑丘中学校の生徒とつなぎ、、リモートで一緒に紙飛行機を折り、その飛距離を競いました。より遠くまで飛ばすにはどのような工夫ができるか、皆で話し合うことや、紙飛行機をよく飛ばした人には、皆で褒め合うなど、終始楽しい雰囲気で活動しました。
「新聞紙タワー」では新聞紙 4 枚でテープを使わずどれだけ高いタワーができるかを職員室の先生と競い合いました。新聞紙を細く切り、紙に対して結ぶことで、先生より高いタワーを生徒が作り上げました。
3日間を通して、生徒たちの楽しそうな表情が増えたことが何よりでした。
●珠洲市立 宝立小中学校
宝立小中学校は、珠洲市の代表的な観光地?見附島の近くに位置し、2012年に県内初の小中一貫校としてスタート。4-3-2制による「習得?活用?探究」の9年間の学びや、「ふるさと珠洲科」といった特徴的なカリキュラムが行われています。3日間通して個別学習支援は、夏休みの宿題であるワークの数国英理社を中心に行いました。レクリエーションは「紙飛行機コンテスト」や「連想ゲーム」などを行いました。
●珠洲市立大谷小中学校
個別学習支援とレクリエーション、珠洲の海の資源を用いたアロマストーン作りを行いました。
個別学習支援では生徒同士で教え合ったり、意見を交換し合ったりする様子も見られました。レクリエーションでは「紙飛行機コンテスト」「ジェスチャーゲーム」「なんでもバスケット」
「新聞紙タワー」を実施。「紙飛行機コンテスト」では一人ひとり紙飛行機を作成し、その飛距離を競い、「ジェスチャーゲーム」はチーム対抗で行い、ジェスチャーで表しているものを答え、その正解数を競いました。「なんでもバスケット」では、中心にいる人が決めたテーマに該当する人が立ちあがり、移動するゲーム。仲を深めるとともに互いのことを知ることができる良い機会となりました。「新聞紙タワー」はチーム対抗で行い、新聞紙で作った造形物の高さを競いました。
珠洲市立大谷小中学校の児童生徒は、自分たちにもできることはないかと考え、「大谷ガチャ」を立案しました。このプロジェクトは大谷町でしか作ることができない商品をガチャに入れて販売し、その利益を珠洲市や大谷町の復興に役立てたいという思いから行われたもので、珠洲の海の資源を用いたアロマストーン作りでは、学校の近くの海岸で得られた貝殻や砂、シーグラスなどを用いて、先生方の指導の下、アロマストーンが作成されました。
能登応援プロジェクトとして教職課程の学生たちが「工大祭」で大谷ガチャを販売
珠洲市立大谷小中学校での学習支援で「大谷ガチャ」の取り組みを知った教職課程の学生たちは、このガチャをより多くの方に知ってもらうために、金沢工業大学にも設置すべきだと考えました。さらに、大谷町や珠洲市の資源を使い、工大祭に参加する一般の方にも実際に制作する機会を設け、珠洲市や大谷町の魅力に触れてほしい、という考えから、教職課程の学生による能登応援プロジェクトとして、10月19日(土)、20日(日)に行われた金沢工業大学の学園祭「工大祭」で大谷ガチャの販売と製作体験コーナーを設け、復興支援に取り組みました。
大谷ガチャの景品
●アロマストーン
児童生徒が思い思いにシーグラスや貝殻を並べてつくりました。
●ピンバッチ
海岸で拾ったシーグラスでつくられています。
●キーチェーン
貝殻や揚げ浜塩、平時忠ゆかりの古代米などを中に入れてつくられています。
●奥能登揚げ浜塩&マグネット
日本で唯一、奥能登でしか行われていない揚げ浜式塩田でとれた希少な塩です。
ボランティアに参加した学生からは、
「私達が得た多くのことは何事にも代えがたく、貴重な経験として今後に活かしていきます」
「ボランティア活動に参加する前、私は無意識に珠洲の人々を『災害の被害を受けた可哀想な人々』という偏見や、自分は助ける立場であると勘違いをしていたかもしれない。実際の活動を通して、物資の運搬や小中学校の子どもたちとのレクリエーションや勉強会に参加する中で、住民の温かさや自然の美しさに触れ、笑顔や一生懸命な姿勢、互いに支え合って過ごしている光景から様々なことを学ばせていただいた」
「能登に行き、こちらが支援や元気を与えるつもりだったが、私達のほうが元気をもらい、学ぶことが多かった」
と感謝の声が寄せられ、学ぶことが多かった半年間となりました。
この度の活動にあたり、支援物資をご提供いただいたJA石川県中央会をはじめ、多くの方々からのご支援?ご協力を賜りました。
また白山ろく少年自然の家の松田まゆみ所長には、清掃活動中の学生のためにボランティア保険等に契約していただき、大変お世話になりました。
皆様に心から感謝申し上げます。
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