ニュース

NEWS

【ロボットプログラミング、スマート農業体験、航空宇宙工学】
新潟市立万代高等学校が金沢工業大学で3日間の実験?体験学習

2025/11/6 NEW

新潟市立万代高等学校 理数コース1年生24名が2025年8月4日(月)から6日(水)までの3日間、金沢工業大学扇が丘キャンパスで実験?体験学習を実施しました。

1日目 「移動ロボット iRobot RootをPythonで動かしてみよう」
2日目 「AI?マイコン×プログラミングで実現する!スマート農業体験」
3日目 「紙飛行機と航空宇宙工学」

3日間にわたって行われた実験?体験学習についてリポートします。

1日目「移動ロボット iRobot RootをPython で動かしてみよう」

1日目は、「移動ロボット iRobot RootをPythonで動かしてみよう」が行われました。 講師は情報理威廉希尔中文网站ロボティクス学科の土居隆宏教授です。

掃除ロボット「ルンバ」で知られるiRobot社が教育用に開発したロボット教材「iRobot Root」を使い、センサーを活用したロボット制御やプログラミングの基本を学ぶという内容でした。

はじめに、Rootの電源の入れ方や充電方法、基本的な扱い方を学びました。また、ロボットをBluetoothを使って無線でPCと接続し、ロボットに搭載されたモーターやLED、スピーカーなどの機能を確認しました。またこれらを組み合わせ、生徒たちはロボットを無線通信でプログラムする体験をしました。

続いて、Pythonを使ったプログラミングに挑戦しました。

最初の課題は「if文」を使った条件分岐です。例えば「前に障害物があれば右に曲がる」という指示をコードに書き込むと、ロボットが状況を判断して行動を変えるようになります。
次に「while文」を使ったループ処理を学びました。これにより、「条件が続く限り動作を繰り返す」という仕組みを作ることができます。土居教授からは、「ループと条件分岐を組み合わせることで、単純な動作を超えた高度な自律行動が可能になる」という説明がありました。
この学習を通じて生徒たちは、ロボットの自動動作の基盤となるプログラミングの理論を理解しました。「コンピュータは条件を判断し、繰り返し動作を制御することで、人間が思い描いた行動を機械に再現できる」という点が、印象に残ったようです。

実習での工夫と発想

講義の後には、実際にPythonを使ってプログラムを書き、ロボットを動かす実習を行いました。プログラムを組み合わせることで、ロボットの表現は一気に多彩になります。ある班では「ロボットの背面LEDの色を変えたり光るパターンを変える」プログラムを作ったり、また別の班では「好きなメロディを演奏させる」という工夫をしました。
このように、自分のアイデアを即座に試せるのがプログラミング実習の魅力です。教室のあちこちで「動いた!」「思った通りにできた!」と笑顔があふれ、時には「思った通りに動かない」という失敗も学びに変わっていました。コードを修正し、再実行して改善する過程そのものが、工学的な探究活動へとつながります。

授業の最後は、これまでに学んだことを生かして音や光と組み合わせて自律的にロボットを動かすという課題に挑戦しました。直進と旋回を組み合わせてロボットを走行させ、ロボットに三角形や星形などを書かせるために図形の辺の長さや角度を計算してプログラムしたり、音の周波数や長さを考えてメロディを演奏させたりしました。発表では各班が様々なロボットの動きを披露し、それをみんなで見て楽しみました。ロボットの動きがうまくいかないと、見ている生徒たちは「この先どうなるんだろう」とのぞき込んだり、うまくいったときには歓声があがったりしていました。

生徒たちの学びと感想

さらに発展的な内容として、ロボットの位置や移動量を推定する「オドメトリ」について学ぶ予定でしたが、時間が足らず学ぶことができませんでした。ちなみに、「オドメトリ」とは自律移動ロボットに欠かせない技術であり、タイヤの回転数やセンサーの情報を組み合わせることで、ロボットが自分の場所を把握する仕組みです。直進や旋回を組み合わせてコースを走らせたり、軌跡データを取るといった学習はできませんでしたが、実習を終えた生徒たちからは、「自分のプログラムでロボットが動いたのが嬉しかった」「センサーや条件分岐を工夫すると、まるで生きているようにロボットが動くのが面白かった」といった感想が聞かれました。

1日目の体験では、ロボットを動かす基盤となるプログラミング の基本を学びました。生徒のみなさんは、ロボットを無線通信を通じてプログラムし、搭載したモーターやLED、スピーカーを自由にコントロールする体験をすることで、工学や情報科学の学びの奥深さと楽しさを実感しました。
普段の授業では体験できない「自分で考え、書いたコードが機械を動かす」という経験は、ロボット技術やプログラミングへの興味を大きく広げたようです。

2日目「AI?マイコン×プログラミングで実現する!スマート農業体験」

実験研修の2日目は「スマート農業体験」をテーマに行われました。講師は、情報理威廉希尔中文网站情報工学科の河並 崇教授と知能情報システム学科の佐野 渉二准教授、プロジェクト教育センターの小間 徹也技師が担当しました。

実習では、AI(人工知能)とマイコン(micro:bit)を活用したプログラミング実習を行い、現代農業が抱える課題とその技術的な解決方法について学びました。

農業従事者が抱える課題と背景の理解

初めに、河並教授から、日本の農業の従事者の農業従事者の減少傾向や平均年齢の上昇などの統計データをもとに、高齢化と人手不足という深刻な課題に対して、スマート農業の必要性が説明されました。特に、収穫物の選別作業は人手に依存しており、AIによる自動化が期待されています。今回は「きゅうりの曲がり具合による選別作業」において、人間の目で行うような判別を画像認識AIで行い、「きゅうりの選別装置の開発」を題材として実践的な体験を行うことが説明されました。

AIによる画像認識体験解

生徒たちはまず、Googleの「Teachable Machine」を使って画像認識AIの学習を体験しました。きゅうりの「まっすぐ」「曲がっている」などの分類を行うため、教師データとして複数の画像を用意し、AIに学習させました。学習後は、未知の画像に対してAIがどの分類に属するかを判定する様子を確認しました。

micro:bitによる制御体験

次に、AIの判定結果をもとに、micro:bitを使って選別装置のモーターを制御するプログラムを作成しました。Stretch3というScratchベースの開発環境を用いて、AIの分類結果に応じてサーボモーターの角度を変えることで、きゅうりを異なるトレイに振り分ける仕組みを構築しました。

チームでの装置開発と試行錯誤

生徒らは4~6人のチームに分かれ、カメラの設置位置やトレイの角度、モーターの動作タイミングなどを相談しながら、試行錯誤を繰り返しました。画像認識のAIの精度や照明条件による判定のばらつきなど、実際の開発に近い課題にも直面し、改善を重ねながら、AIとプログラミングを体験しました。

生徒たちの学びと感想

「AIが自分の作った装置を動かすのが面白かった」「画像の違いをAIが見分けるのがすごい」など、技術の仕組みを体感することで、情報工学への興味が高まった様子でした。また、AIの学習には多様なデータが必要であることに加え、マイコンによる制御では実際の装置の挙動を丁寧に観察しながらプログラムを調整する重要性についても理解が深まったようです。

2日目の体験では、AIとマイコンを組み合わせた「スマート農業」の一端を体験することで、情報技術が社会課題の解決に直結する可能性を実感する貴重な機会となりました。生徒たちは、技術の仕組みを理解するだけでなく、実際に自分の手で装置を動かすことで、探究的な学びの楽しさを体感しました。
今回の学びを通じて、AIとマイコンの組み合わせは農業分野に限らず、教育、福祉、家庭、環境など、さまざまな分野への応用が期待されます。今後の探究活動や創造的なプロジェクトに活かされるとともに、身近な課題を自らの力で解決しようとする姿勢の育成にもつながったと考えられます。

3日目「紙飛行機と航空宇宙工学」

実験研修3日目は「紙飛行機と航空宇宙工学」です。講師は威廉希尔中文网站航空宇宙工学科の森吉貴大助教。JAXA宇宙科学研究所での研究経験を持つ専門家です。
生徒たちは紙飛行機の飛行実験を通じて、航空機力学の基礎や宇宙工学の応用について体験的に学びました。

紙飛行機はなぜ飛ぶのか?

授業の始め、森吉助教から「よく飛ぶ紙飛行機が完成するには何が必要?」と問いかけがありました。生徒たちは翼の形や材質、投げ方などいろいろと意見を出し合いながら、紙飛行機について深く議論をしあいました。森吉助教からは、航空機力学の基本概念である揚力?抗力などの空気力学と重力によるつり合いの説明がありました。さらには風洞実験による迎え角と空気力の実演を通して視覚的に風と翼の角度によって発生する空気力の変化を確認する演習が行われ、紙飛行機が飛行するときにどのような物理的な法則が働いているか理解を深めました。

紙飛行機と飛行実験

その後、生徒たちは3人1組のチームに分かれ、重心位置を変えた3種類の紙飛行機(ノミナル条件、前寄り、後ろ寄り)を作成しました。おもりの配置によって飛行の安定性や距離がどう変化するかを検証するのが目的です。
予め用意された紙飛行機の機体に、マスキングテープでおもり(座金)を固定。安定して飛ばせる方法などの工夫を凝らしながら、各チームが試行錯誤を重ねました。飛行実験では、飛距離?飛行速度?揺れ方などを観察し、飛行の様子を記録しました。
結果として、重心が後ろ寄りの機体は上下に揺れながら飛ぶ傾向があり、前寄りの機体は安定して飛ぶものの、すぐに落下することもありました。ノミナル条件の機体は最もバランスが良く、滑らかに飛行する様子が確認されました。また森吉助教の実演としておもりの位置をさらに後ろにした紙飛行機を飛ばした結果、くるくると回転しながら落下する飛び方をすることがわかりました。以上のことから紙飛行機における重心位置の重要性を視覚的に理解することができました。

操縦と制御の体験

後半では、飛行機の操縦に関する内容として「舵面(エレボン)」の役割について学びました。紙飛行機の翼の後端を曲げることで、飛行の方向や姿勢を制御できることを実験で確認しました。生徒たちは、左右の舵面を同じ角度で曲げた機体と、曲げていない機体を比較し、飛行の違いを観察しました。
また、飛行中の重心位置と風圧中心の関係が飛行の安定性に影響することも学びました。これらの知識は、実際の航空機設計にも応用される重要な要素であり、生徒たちは物理法則と工学のつながりを実感しました。

生徒たちの学びと感想

授業の最後には、各チームが実験結果を報告し、飛行の違いや考察を共有しました。生徒からは「重心の位置でこんなに飛び方が変わるとは思わなかった」「舵面の効果が面白かった」「航空工学が身近に感じられた」といった声が聞かれました。

第3日目の実験授業では、紙飛行機という身近な題材を通じて、航空宇宙工学の基礎を体験的に学ぶことができました。揚力、抗力、重力のバランスがうまく取れていると、飛行機は安定して飛ぶことができ、重心の位置や風の力がかかる場所(風圧中心)がずれていると飛び方が変わることを理解することができました。また、翼の後ろを少し曲げることで、飛行機の向きを変えたり、安定させたりできることも学びました。これは実際の飛行機にも使われている「操縦のしくみ」です。
今回の紙飛行機の飛行実験を通して、自分で考えて、作って、試して、直すという「工学の考え方」も体験でき、科学的な思考力と創造力を養うことができました。今後もこのような実践的な学びの場が、次世代の科学技術人材の育成につながることを期待しています。

(関連ページ)

金沢工業大学研究室ガイド 情報理威廉希尔中文网站 ロボティクス学科 土居隆宏 研究室

金沢工業大学研究室ガイド 情報理威廉希尔中文网站 情報工学科 河並崇 研究室

金沢工業大学研究室ガイド 情報理威廉希尔中文网站 知能情報システム学科 佐野渉二 研究室

金沢工業大学研究室ガイド 威廉希尔中文网站 航空宇宙工学科 森吉貴大 研究室