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【世界初のランドリーシステム開発に挑む】
大学院生がアイナックス稲本の社員として先端技術開発業務に従事。
KITコーオプ教育プログラム成果発表会をリポート

金沢工業大学では、学生が企業の一員として専門業務に従事し、実践的な問題解決能力を養う「KITコーオプ教育プログラム」を実施しています。2025年度後期には、金沢工業大学大学院工学研究科 バイオ?化学専攻博士前期課程1年の安間俊哉さん(谷田育宏 研究室)が、アイナックス稲本株式会社(石川県白山市)において8月から11月までの4カ月間、先端技術開発業務に従事しました。
この成果報告会が、2026年1月13日(火)に同社 白山テクニカルセンターで開催されました。報告会には、同社代表取締役社長の鏑流馬裕二氏ならびに役員、業務推進本部、技術本部の関係者が出席。金沢工業大学からは大澤敏学長と教員、産学連携担当者が参加し、活発な質疑と意見交換が行われました。
アイナックス稲本株式会社(東京都品川区)は、業務用洗濯機?乾燥機?仕上げ機などを製造?販売する国内最大手のランドリープラント総合エンジニアリング企業。病院?ホテルなど幅広い業界の衛生環境を支えています。金沢工業大学とは2019年から共同研究が行われ、「KITコーオプ教育プログラム」の実施は、このたびが初めてとなりました。
成果報告発表会の概要
世界初の洗濯システムの開発に携わる

安間さんが携わったのは、同社が開発中の世界初の洗濯システムです。業務用洗濯は長い間、回転ドラムによる洗濯、乾燥、油圧プレスによる脱水、ロールアイロナーによる仕上げ、というふうに工程ごとにそれぞれの機械を用いて行われてきました。その手法やメカニズムは50年以上ほとんど変革がなく、今日に至っています。
これに対して、アイナックス稲本株式会社が開発を進める洗濯システムは、「洗わないで洗う」、「仕上げないで仕上がる」ことを目指す新たな方式。1台で全工程を完結させる革新的なシステムの開発です。無人運転システムにより、「労働力不足」や「エネルギー(脱炭素)」といった社会課題も一気に解決するものとして期待されています。
すべてをゼロから組み立てるー「技術開拓」を初めて経験
この技術は「誰も正解を知らない世界初の挑戦」であるため、試験環境の立ち上げから評価指標づくりに至るまで、すべてをゼロから組み立てる必要がありました。特に評価指標の構築は大きな課題で、既存の洗濯方式とは前提が大きく異なるため、従来の指標がそのまま使えません。
そこで安間さんは、一般的なウェットクリーニングを基準にベンチマーク測定を実施し、洗剤の有無、温度、機械力などの条件を変えながら、洗濯システムが目指すべき洗浄効率を数値として可視化していきました。人工汚染布やMA試験布などの評価素材を使い、貼り付け位置により測定値が変動する問題に直面した際は、布の折り方や固定方法の工夫を重ね、精度の高い測定ができる環境を自ら作り上げました。
装置も試作
安間さんは装置づくりの現場でも多くの経験を積みました。配管の接続、金属の切断や穴あけ、電気配線、装置の搬入?設置など、大学の研究では触れる機会の少ない実務作業を担当。分からないことがあれば積極的に他企業へアプローチし、社内で情報を共有しながら解決策を複数用意する姿勢が求められ、スピード感を伴う実務の難しさと面白さを実感したといいます。
4か月で得たもの
安間さんは成果発表会のまとめとして、全く新しい概念を作っているアイナックス稲本株式会社に就業したからこそ、試行錯誤を繰り返す開発の面白さに触れられたと語りました。この4か月を通じて、「目的とゴールを常に意識する姿勢」「主体性」「コミュニケーション力」の大幅な向上を実感。企業ではコスト?品質保証?実現可能性といった観点が重視され、大学での研究とは意思決定の軸が大きく異なることを肌で理解しました。また、0から1を生み出すのではなく、既存技術の“0.1を積み上げて1にする”という製品開発のリアルにも触れ、モノづくりへの意欲が一層高まったと話します。そして指導してくれた企業の皆様、就業体験を支えてくれた大学関係者への深い感謝を述べつつ、今回の学びを修士研究や将来のキャリアに活かしたいと締めくくりました。
なおアイナックス稲本株式会社では、2019年からの金沢工業大学との共同研究から始まり、今回初めて実施したコーオプ教育プログラムにおいても良い成果を得ることができたとして、今後もKITコーオプ教育を継続していく考えです。


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