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学生自らが社会性のある研究課題を発見し、イノベーションを創出。社会実装型のプロジェクト教育で、未来社会 Society5.0をリードする研究力を身につける
身近な社会課題と地球規模課題に結びつけた研究プロジェクトが学生により創出
「誰一人取り残さない世界」の実現に向けて国連全加盟国が合意した世界を変えるための17の目標 SDGs。
金沢工業大学は、第1回「ジャパンSDGsアワード」SDGs推進副本部長(内閣官房長官)賞を受賞した日本を代表する国連SDGs推進高等教育機関です。学生自らが社会的価値を持つ研究課題を発見し、その解決策を提案する、プロジェクトデザイン教育とよぶ理工系PBL(Project Based Learning)を全国に先駆けて1995年度より実施し、カリキュラムの柱に据えています。
全学部?学科の学生が受講可能なSDGsに特化した授業も開講し、身近な社会課題と地球規模課題を結びつけたさまざまな研究プロジェクトが学生により創り出されています。
社会実装型の教育研究で、イノベーション創出を可能にする研究力を身につける
金沢工業大学では2012年度より工学教育の世界標準 CDIO (Conceive 考え出す、Design 設計する、Implement 実行する、Operate 操作?運用する)を日本の大学で初めて導入し、実践しています。
解決策として考え出されたアイデアはアイデアに終わらせず、プロトタイプとして具体化し、操作?運用する中で有効性を検証、評価。得られた研究成果は実社会に組み込み、その中で新たな発見を得て研究を深めていく社会実装型の教育研究を通じて、イノベーション創出を可能にする研究力を身につけます。
Society5.0で必要とされる高度な情報技術を身につけ、問題発見、解決に活かす
さらに2020年度入学生から「AI基礎」「ICT基礎」を全学部?学科の必修科目として実施します。また発展?応用系科目として「AIとビッグデータ」コース、「IoTとロボティクス」コース、「ICTと情報セキュリティ」コースの3コースを設置。Society5.0で必要とされる高度な情報技術を身につけ、問題発見、解決に活かせるようにします。
金沢工業大学で、国連SDGs達成に貢献し、Society5.0をリードする研究力を身につけるー
金沢工業大学では未来を創造していく主役は学生たち自身です。
学生による社会実装型研究事例
■コード化点字ブロックを用いた情報案内実証実験を金沢21世紀美術館周辺歩道で実施
情報工学科 松井くにお教授(専門:人工知能)の研究室では、コード化点字ブロックを用いた情報案内実証実験を令和2年2月15日(土)に、金沢21世紀美術館周辺歩道で行いました。視覚障がい者にとってはなくてはならない点字ブロックですが、情報は「誘導」と「注意喚起」の2種類のみで細かいことが伝わりません。コード化された点字ブロックは黒点や矢印をつけたもので、スマートフォンで読み取ると、周辺の施設などの情報が文字と音声で流れます。視覚障がい者だけでなく、観光客や外国人にも、初めて訪れる場所での情報を提供することが可能です。
■女子学生が卒業研究で「遠距離恋愛支援システム 心拍と体温でつながる抱き枕」を開発
情報工学科4年の間山美和さんは卒業研究として2019年1月、”遠距離恋愛支援システム 心拍と体温でつながる抱き枕”「HALOP」を発表しました。相手の心拍音は、腕時計型のウェアラブル端末を通じて心拍数を計測し取得。抱き枕の中に体温を再現する電気ヒーターと相手の心拍音が聞こえるスマートフォンを入れることで、離れている相手を非同期でいつでも感じることが可能です。
■金沢工業大学の新しい研究室の形「クラスター研究室」
クラスター研究室は金沢工業大学の新しい研究室の形態です。2017年7月に未来の新技術や新たな価値を創造する場として開設されたChallenge Labを拠点に、社会性のある課題に研究室の枠を超えて学生が集まり、卒業研究や修士研究に取り組んでいます。ユーザーに実際に使ってもらうことで、ニーズに即したより実用的な装置の開発を目指しています。
障がい者スポーツの普及に貢献するため、ロボティクス学科と機械工学科の学生が製作したのがVR型チェアスキーシミュレータです。仮想空間の斜面と連動して実空間の台座も動くため、より臨場感が味わえます。季節や環境に左右されず、誰もがチェアスキーを楽しむことができるほか、各種の展示会やイベントで多くの人たちに体験してもらったことが評価され、第21回バリアフリー社会推進賞 福祉用具部門 最優秀賞を受賞しています。
また認知症高齢者の介護現場のニーズをもとに開発された「ゆきちゃん」は、「もうすぐ朝食です。口の体操をして待ちましょう」とデイルームで話しかけることで朝食時の徘徊を抑えるロボット。トイレでは便座に付けられた圧力センサーと連動して「終わるまでそばにいて見守っていますね」と注意を促すロボットも開発され、介護施設での実証実験が行われています。
■固定翼小型VTOL(垂直離着陸機)試作機を開発。白山麓における薬の輸送等での活用を目指す
航空システム工学科赤坂研究室、情報工学科中沢研究室、金沢エンジニアリングシステムズと、組込みシステム技術協会では、共同で固定翼を持つ無尾翼小型VTOL(垂直離着陸機)の試作機を開発しました。離島や山間部での小口輸送を想定したもので、白山麓における薬の輸送等での活用も目指しています。製作レシピは最終的にはオープンソースとして公開し、国産ドローン産業の育成に寄与します。
■建築学科 竹内研究室が金沢のベイエリアの築80年の倉庫をカフェにリノベーション
建築学科 竹内申一研究室がデザインしたショップ&カフェTen riversideは築80年の倉庫をリノベーションしたものです。川に面したカフェの客席は、川面に反射した光がゆらゆらと天井に映り込む、明るく居心地の良い場所となっていて、金沢のベイエリアでの新たなスポットとして注目されています。
なお竹内研究室は2014年に「しお?CAFE」のデザイン?設計?施工にも取り組んでいます。能登半島先端の限界集落にあった古民家をカフェに改修したもので、2015年度グッドデザイン賞を受賞しています。
アイデアの社会実装を可能にする金沢工業大学の高度な研究環境
金沢工業大学には、学生同士で議論しあい、生み出したアイデアはプロトタイプとして具体化し、実験、検証、評価していける高度な研究環境が整備されています。
「夢考房」にはアイデアをプロトタイプとして具体化できる「場所」「道具」「材料」「知識」が整っています。金属3Dプリンタや樹脂3Dプリンタ、電子基板の製作や金属加工、樹脂加工、木材加工などのブースのほか、巨大な屋内試走スペースを備えています。
やつかほリサーチキャンパスは金沢工業大学の14の研究所が集積した研究キャンパスです。卒業研究や修士研究で生み出した仮説や理論を実験、検証、評価できます。
白山麓キャンパスは実証実験キャンパスとして2018年に開設されました。「再生可能エネルギーの地産地消」「災害に強靭な社会」「農業イノベーション」をキーワードに地方創生を目指す全学横断型のイノベーションプロジェクトが研究成果の社会実装を目指して活動しています。
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金沢工業大学の学生の研究がわかる動画サイト
Webサイト「物語の始まりへ」では、金沢工業大学の学生によるさまざまな研究を動画でご覧いただけます。
「物語の始まりへ」特設サイト