- 虎ノ門大学院ブログ
- 2022年02月25日
内閣府「知財?無形資産ガバナンスガイドライン」の策定に携わった杉光一成教授による特別講演を開催、定員を超える約120名が参加!
今回の虎ノ門大学院ブログでは、2月17日(木)にオンライン形式で行われたKITプロフェッショナルミーティング、杉光一成教授の特別講演イベントの様子をレポートします。
■ イベント開催の背景と杉光教授の関わり |
上場企業に適用される「コーポレートガバナンス?コード」(注1)が2021年6月に改訂され、「知的財産」に関する文言が加わりました。知的財産に関する取締役会の監督と情報開示を促す内容です。背景にあるのが、企業価値に占める無形資産の重要性の高まりです。米国S&P500では、市場価値の9割を無形資産が占めるという試算もあります。
今回の重要な改訂を受けて、内閣府は検討委員会を組成し、2022年1月に「知財?無形資産の投資?活用戦略の開示及びガバナンスに関するガイドライン」を策定?発表しました。
こうした動きを受けて、2022年2月17日(木)の夜に、検討委員会のメンバーであり、東京大学未来ビジョン研究センターの研究フォーラム「知的財産と投資」の幹事でもある杉光一成教授による特別講演をオンラインで開催しました。
「知財?無形資産ガバナンスガイドライン」と「知財KPI」そして「IPランドスケープ」(注2)の新たな意義、と題されたこの講演。ガイドラインの策定に携わった杉光教授がその「行間」を解説する貴重な機会であり、知財戦略や企業戦略、広報?IR業務に携わる方など、参加者は120名を超えました。
注1:企業が株主をはじめとする多様なステークホルダーとの望ましい関係性や、企業を監視する取締役会などの組織のあるべき姿について記述した文章のこと。日本企業のガバナンスの底上げを目的に、2015年に金融庁と東京証券取引所が共同で策定
注2:自社を含めた他社の知的財産の調査の結果を分析し、経営戦略?事業戦略に活用すること。2020年には、トヨタ自動車やKDDI、ナブテスコや旭化成といった大手企業の知財部門長が発起人となり、「IPランドスケープ推進協議会」が発足した
■ 公表されたガイドラインの行間を読む |
では、そもそも何のために知財ガバナンスに取り組み、何のために開示するのでしょうか?また取り組むにあたってのポイントは何なのでしょうか?こうした疑問に対し、杉光先生の約1時間の講義を実施しました。以下にポイントのごく一部をご紹介させて頂きます。
?企業価値を持続的に高めていくためには、長期志向で巨額の投資を行っている機関投資家からの評価を高めることが重要
?投資家は、投資適格の判断の際にはROICやROEなどの財務情報に加え、経営理念やビジネスモデル、知的財産などの非財務情報も検討し、持続的な競争優位性のある企業を投資対象として選ぶ
?持続的な競争優位の実現において、知的財産は最も強力な手段の一つ。知的財産データは経営指標?投資指標としても有効。しかし、十分に活用されていない
?広報やIRで開示される定性的な情報だけでは投資判断には不十分。このギャップを良い形で埋めるための基本的な考え方(マニュアルではない)を示したのが今回策定されたガイドライン
?機関投資家が他社と横並びでの比較を行い、エビデンスを獲得するためにも、定性情報だけでなく「知財KPI」による定量的な監督と開示に企業が取り組むことが重要かつ有効
?IPランドスケープに取り組んでいること自体が「経営に知財を組み入れて事業戦略を立案している」ことのエビデンスになる
金融庁や内閣府への提言など、第一線で携わられている杉光先生ならではの行間や裏話、そして他の専門家や投資家の声も交えた、丁寧で分かりやすい内容でした。その後の質疑応答も、限られた時間ではありましたが、大変盛り上がりました。
■ 杉光研究室への誘いと参加者の声 |
講演の最後には、杉光先生から参加者の方へ「最先端かつ実践的で社会的インパクトもある調査?研究を一緒にしませんか?」という呼びかけがありました。
1年間、研究テーマを定めて取り組む専修科目(修士研究?ゼミ指導)では、院生の皆さんの研究内容が実際の政策や企業の取り組みに反映されたケースも過去に複数あるとのこと。こうした調査?研究に少人数で取り組めることが、KIT虎ノ門大学院の魅力でもあります。
20時30分過ぎにイベントは無事終了しました。参加者アンケートの結果を見ても満足度は高く、たくさんの感想が寄せられましたので、その内容を一部抜粋して紹介します。
「会社でCGC(コーポレートガバナンス?コード)の担当になり、わからないことが多くありましたが、本日のセミナーを受講して、どのような観点で考えて行くべきであることがよくわかりました。ありがとうございます」
「知財KPIやIPランドスケープなど、言葉は知っていたものの、どんなものかちゃんと理解できていませんでしたので、大変勉強になりました!」
「こんなに内容の濃いお話を聞けて、感激しています。同僚にこのイベントのことを教えなかったのが悔やまれます。是非、杉光先生のゼミで研究したいです」
「改訂背景等を含めてお話を伺うことができ、点で理解していた部分がストーリーとして繋がって消化できた気がしました。大変勉強になりました」
残念ながら、2022年度4月入学に向けた出願期間は2月24日(木)で締切となりましたが、ご関心のある方は、ぜひ2023年以降の進学?受講をご検討ください。一方、いきなり大学院への進学は難しいという方には、知財やビジネス、エンタメやAIなど多彩なカリキュラムを、1科目から受講できる科目等履修生制度も用意しております。こちらは4月、6月、9月、11月と年4回入学する機会がありますので、ご自身のスケジュールに合わせて挑戦してみてください!