- 虎ノ門大学院ブログ
- 2024年12月17日
【授業レポート】システムシンキング要論(上野善信/松木知徳)
対処療法から原因療法へ、複雑な問題の本質を捉える
今回の虎ノ門大学院ブログでは、3学期に開講している「システムシンキング要論」をご紹介します。2022年度にスタートしたばかりの科目ですが、早くも多数の受講生を集める人気科目となっています。成績の付け方は、出席?受講態度が10%、クラスでの発言20%、演習/宿題の提出30%、期末プレゼンテーション40%で、高いアウトプット能力が要求されます。1コマ目の授業の様子をレポートしますので、ぜひ最後までご覧ください。
■ 複雑な問題を俯瞰的に理解し、構造から解決する力を養う |
ビジネスや日常生活における問題解決の多くは、目先の問題に対処する「対症療法」にとどまりがちです。しかし、複雑な問題を解決するためには、問題の構造や因果関係を深く理解する必要があります。「システムシンキング要論」では、こうした複雑な問題に対し、根本から解決を図る「原因療法」を目指すための手法を学びます。
システムシンキングの考え方は、1972年に米国MITの研究者により発表された、地球資源の有限性を指摘する研究レポート『成長の限界』により注目を集めました。その後、1990年に経営学者のピーター?センゲによる『The Fifth Discipline(学習する組織)』が出版され、学習する組織にとってもっとも重要な第5の規範として紹介されるなど、システムシンキング=システム思考がビジネスにも広く応用されるようになりました。
本科目では、ロジカルシンキングとシステムシンキングの違いを学び、受講生自ら手と頭を動かしながら、問題の背後にある因果の構造や時間経過とともに発生する作用について「因果ループ図」などを使って可視化するスキルを身につけます。さらに、様々なケーススタディを通じて、システムの中で各要素がどのような動き(振る舞い)を持ち、タイムラグがある要素ががシステムにどのように影響するかなどを理解し、人を責めるのではなく、システムの変革によりビジネスや日常生活での課題解決を図る思考力を育みます。
授業の冒頭では、上野先生と松木先生から「システムって何ですか?」「モデルって何ですか」「何のためにシミュレーションがあるのですか?」「ロジカルシンキングとシステムシンキングは何が違うの?」など、受講生に向けて本質的な問いが次々と投げかけられます。
対面参加とオンライン参加の選択が可能
そして、本科生だけでなく科目等履修生が交じり合っていることもあり、顔合わせを兼ねて受講生がひとりずつ自己紹介を行いました。取材当日も、組織図はモデルなのか?組織図は何のためにあるのか?をテーマに、3名ずつのグループに分かれてディスカッションを行いました。
<各コマの学習内容 ※シラバスより抜粋>
1,2コマ:ロジカルシンキングとシステムシンキング:人を責めない問題解決アプローチ/モデリングの考えと事例/ステークホルダーバリューネットワーク図/重要な変数の抽出
3,4コマ:システムダイナミクス/因果ループ図/情報フィードバック/資源問題、堤防問題、道路問題などのケーススタディ
5,6コマ:システムの振る舞いと構造/指数的成長、目的追求、振動などの分析/ケーススタディ
7,8コマ:各自の課題の整理と発表
■ 豊富な経験に基づいた実践的な講義 |
上野善信教授は、メーカー系システムインテグレーターでのSCMコンサルティングやベンチャー企業の立ち上げ、外資系コンサルティング会社の日本法人代表などを経験し、現在も製造業、流通業、サービス業の経営改革支援に取り組んでいます。KIT虎ノ門大学院の専任教員として、ビジネスプロフェッショナルの育成経験も豊富です。
松木知徳客員准教授は、KIT虎ノ門大学院の修了生で、リクルートマネジメントソリューションズで人事?組織開発コンサルタントや新規事業開発マネジャーとして活躍した後、現在は、SBI大学院大学でも教鞭を執りながら、社会福祉法人仙萩の杜の理事長として障がい者支援事業に取り組んでいます。
2人は異なるバックグラウンドを持ちますが、それぞれのビジネスキャリアの中でシステムシンキングを「経営レベル」で実践してきた専門家です。この講義の特徴は、経験豊富な担当教員と受講生が対話しながら進める、極めて実践的なスタイルで、グループワークやケーススタディ、ディスカッションが繰り返し行われます。
全8コマ(4日間)の授業の最後には、受講生が自身の課題を実際に構造化し、フィードバックを受ける機会があります。コンサルタントや経営者としての経験豊富な2人からのフィードバックは、学びを深めるだけでなく、実際に課題を前進させる貴重な機会でもあります。