専任教員インタビュー集

山田 英二
Eiji YAMADA
教授/MBA
「日本のリバイバル」に向けて
先行する海外の理論や様々な国内事例を通し、
組織が変わる風景を見せたい
山田英二

ハーバードMBAでも注目されていた日本の製造業

1980年代中盤、それまで不動の経済大国だったアメリカでは、急速に成長してきた日本に対する「ジャパン?バッシング(日本への非難)」が起きました。日本との貿易の不均衡などについて、政治家から威廉希尔中文网站、市民まで日本を叩く動きが見られたのです。繁栄を遂げた東洋の一国に感じる脅威の裏返しでした。

それから約40年、今やアメリカにとって日本は非難の対象にならず、その向こうの中国に目が行っています。状況は「ジャパン?パッシング(日本を素通り)」へと変わりました。

そんな日本の変化を文字通り“体感”し、心からこの国のリバイバルを望んで教壇に立つのが山田英二教授です。

日本がバブルに湧いていた1990年、当時の新日本製鉄に勤務していた山田教授は、アメリカのハーバード大学経営大学院に行きMBAを学びました。その頃は、アメリカ最高峰の大学でさえ、日本のビジネスパーソンを特別視していたといいます。躍進著しい日本の製造業から来たというだけで注目され、講義では「手を挙げていないのに教授から意見を求められました」と、笑顔で当時を振り返ります。

「そんな状況ですから、日本に急速に追い上げられていたアメリカ企業は、それまでのやり方からの大きな転換を迫られていました。当時、アメリカで盛んに研究されていたのが、企業が従来の姿から大きく変革し、再構築するための方法、『チェンジマネジメント』です」

ハーバードのMBAにもその科目があり、山田教授も受講しました。そしてこのチェンジマネジメントこそ、現在、山田教授がKIT虎ノ門大学院で担当している講義なのです。

あの時のアメリカのように、日本も「転換」が必要に

なぜ、この大学院でチェンジマネジメントを教えようと考えたのでしょうか。ひとことで言えば、日本もその頃のアメリカと同じ状況に陥ったからです。

「MBAを修了して日本に帰ってきた直後にバブルは崩壊し、企業の倒産や大規模なリストラが次々に起こりました。次第に私は日本のリバイバルを支援したい、企業を再構築したいという思いが強くなり、BCGでの戦略コンサル経験を経て、企業再生や事業開発を行う投資ファンドに転籍しました。この大学院から講師の依頼があったのも、そんな思いを抱いていた頃です。現在でもキャップジェミニでDXコンサルの現場に立っています」

教えることも日本の再生につながると考え、依頼を快諾した山田教授。どんな講義をやりたいか尋ねられ、即答で希望したのが「チェンジマネジメント」でした。

「かつてのアメリカのように、日本企業の“転換”がまさしく求められている時であり、日本でもチェンジマネジメントが必要とされると思ったのです。日本企業が成長していた頃は社員が輝き、若い人も先輩に触発されて成長する好循環が生まれていました。しかし企業の成長が止まると、人事は停滞し、社員が挑戦する機会にも恵まれない。悪いことが連鎖する負のスパイラルに陥っていました。それをどうにか変えたかったですね」

ボトムアップの思考では、武士が刀を使い続けるラストサムライの戦略に

山田教授が教えるチェンジマネジメントは、さまざまな企業の変革事例を提示し、ケースメソッドでディスカッションしながら、その変革のプロセスや要素を学んでいくスタイル。「海外の理論と国内の事例を通して学生が変革のプロセスをイメージできるように、新しい風景を見られるようにしたいのです」と話します。

「企業を変えろと言われても、何を行えばいいのか具体的にイメージできない人は多いでしょう。今までのやり方で成功してきた人は、その枠組みの中で物事を解釈し、手段を考えるので、会社全体を俯瞰して組織を大きく変えるのは簡単ではありません。しかし、チェンジはプロセスであり、事前にデザインして意図的に起こすもの。そのために必要な要素や、裏側のカラクリを事例や個々の体験から共に学んでいきます」

本当に企業を変えるには、マーケティングや組織開発といった特定の分野にとどまらない、領域を横断した複合的な視点が必要とのこと。今の組織はデジタル以前の分業構造であり、一人一人の視点は従来の部門や専門にとらわれてしまいます。しかしそれでは企業全体の変革を考えるのは難しく、高い視点から全体構造を見ることが大切になります。

「わかりやすい例が、長篠の戦いにおける鉄砲隊でしょう。鉄砲という最新の武器があっても、その特徴を活かした戦略や戦術が無ければ威力は存分に発揮されていなかった。同様の例では、第一次大戦中にイギリスで発明された戦車で、ドイツ軍が機動部隊を編成するまではその真価が発揮されなかった。現在のデジタル技術についても同様で、ボトムアップでは従来の枠組みから脱却するのが難しい。」

話の中で合戦の例えが出てきたので、ためしに戦国好きなのか尋ねてみると「そうではなく、むしろ戦いは嫌いです(笑)。説明しやすいからその例えを出しているだけですよ」と、にこやかに答える山田教授。実際のプライベートでは、10年以上太極拳に毎週通い、書道にも挑戦するなど、公私ともども探求家。その人が一貫して追い求めるのが日本のリバイバルです。この教壇に立つのも、そんな想いが根底にあるのです。

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